
秋の授業

9月
■始業式
夏休み明けに久しぶりに子どもたちに会うと、全体的になんとなく背が伸びているような気がする。
去年の生徒のKeとUeは声変わりをしていた。特に女の子たちはどんどん変わっていく。本当に子どもにとっての一年は貴重であり、われわれ教師の与える影響の大きさを考えると、身が引き締まる思いである。
■昼ごはん
今日のランチにはインスタントのカレーを持っていった。電子レンジでチンしてカフェテリアに持っていくと、カレーのにおいに引き寄せられて子どもたちが集まってくる。例のごとく子どもに取り囲まれるのだが、今日は20人くらいに取り囲まれた状態なので、身動きがとりにくい中で食事をしなければならなかった。
食べ終わると「先生、ぼくが捨ててきてあげるよ」と空になった容器とスプーンを持って行ってくれる。「そうか、ありがとう」と言った直後、「先生、Saが先生のカレー食べてるよ!」容器に残ったカレーをスプーンでかき集めて食べているのだとの事。あきれたやつだ・・・。
■ランチの後
ランチの後は、子どもたちとドッヂボール。ボールをキャッチできない女子まで入ってくるので、ただ逃げるだけ。きゃーきゃーと大変な騒ぎである。女子たちがしがみついてくるので身動きが取れず、男子の標的にされてしまう。それでもボールをバシッと受け取って投げ返してやると、これまた大声援である。
■テストの日
1科目60分は長い。でも午前中みんな集中して一生懸命に受検したので、ごほうびに4時間目はゲームをした。
この緩急つけることが肝心だ。これというときに、思いっきり締められるのは、その後にちゃんとリリースをするからだ。子どもたちもそれを知っているので、無言のうちに私の気持ちが伝わる。だからこそのゲームの時間なのである。
後で、隣のクラスの子どもたち乱入。
「先生!うるさいというか、
うらやましい!」
「拍手や、笑い声が聞こえてくるたびに、
いいなーって言ってたんだよ」
「先生、うちのクラスの担任になってよ」
という苦情というか陳情。
■バザーの日
子どもたちにもお楽しみの日である。家庭で不要となった日本の本やおもちゃなどが並ぶのだが、それよりも人気があったのは、PTAのみなさんで出店するわたあめやカキ氷である。
■個人面談
今日は6人。「子どもが喜んで学校に行きます」という言葉を聞くのが何よりも嬉しい。
中には「うちの子がこんな学校が好きになるなんて・・・。日本の先生がびっくりされるほど勉強するようになりました・・・」と涙を拭きながら話してくれるお母さんもいた。
こちらもびっくり。嬉しいやら恥ずかしいやら。とにかく感激である。
10月
■ギター
学校にギターを持って行って、朝の会で弾いてみた。
子どもたちは興味津々。
休み時間になるとギターを触りに来る。
とても関心が高い。
帰りの会ではみんなで大合唱。
さっそく、職員室で隣のクラスの先生から
「いいですねぇ」
と、うらやましがられた。
■男の子と女の子
近頃女の子たちが色気づいてきたような感じがする。
一方男子は、粗暴な行動を起こして女の子の目を
引こうとしている。
何か男子のほうが幼く見える。
女子たちは冷静に見ているぞー。
■帰国した生徒
帰国したBaのお母さんから手紙をいただく。
クラス全員で書いた、Baへの手紙集のお礼だ。
本人もお母さんも大感激してくれたようだ。
クラスで披露し「みんなの手紙は、彼とその家族を
こんなに喜ばせたんだよ」と話す。聞いている子どもたちも嬉しそうだ。ここで過ごしたことは一生の思い出となるだろうね。
■恋の相談
「恋の相談聞いてくれる?」とAsが言ってくるので
「よーし、聞いてやるぞ」。
うちのクラスでは、相談事があれば何でも話していいことになっている。それが恋愛相談でも秘密は厳守するからということで受け付けるのである。
□Yuが帰国することを聞かされる。子どもが学校を離れていくのは、いつもさびしい。何かしてやりたいといつも思う。今まではお別れ会はもちろん、クラスで作文を書いて送ってやったり、文集を送ったりしていた。ここで一緒に勉強した友達のことを、一生覚えていてほしいから。そして、私のことも・・・。
■個人面談
Sa夫妻からの質問に答えているうちに、結構個人的なことにまで話が及んだ。私は他の先生とは違うから関心があるのだという。普通の小学校教師では書かないようなことが、学級通信や授業のプリント、子どもの話から感じるという。そしてそれは夫妻の教育の考えと一致しているとのこと。
「こんなことをしてくれる先生が理想だった」
と、ありがたい誤解をしてくれていたのだった。
感謝なことです。
■叱る
5時間目に子どもたちを叱る。
休み時間に黒板に落書きをするのはいいが、その後はきちんと消しとけと。授業に支障がないようにしておけば目をつぶっていたのだが、書きっぱなし、いすや机がチョークの粉だらけの状態が目に付いたので、叱った。
「さて、どうするべきだと思う」
と私からこうしろとは言わず、
子どもたちに決めさせる。
こうしてクラスのおきてが出来上がっていく。
素晴らしい子どもたちだ。
■ハナクソ
算数の問題をみんなで解いているとき、もう出来たのかKeが得意顔で、
「先生、できたらどうするんですか?!」
と聞く。まだ出来ていない子もいるのに。
まだ問題に取り組んでいる子に対して気分良くない言い方なので
「ちょっと待ってて」
とか
「そんなこと言わず、空気読もうよ」
とそれとなく言うが、
あまりしつこく聞いてくるので、
「ハナクソほじくっとれ!」
と言ってやる。
すかさず
「さすが先生!」
と声が飛ぶ。
■戸外授業
昼休み、体育館でのドッヂボールの熱気が覚めやらないまま5時間目に入る。教室内は暑苦しく「外に行こうかな」という気持ちがすぐに子どもたちに伝わる。
「外行きたいか?」
「行くー!!」
「静かに行動して、ちゃんと勉強するか?」
「しまーす!!」
ということで、みんなで静かに教室を出て、校庭に出る。芝生の上に寝そべっての授業をした。国語の時間ならまだしも、算数なんだから・・・。でも、みんなは開放感に浮かれたりすることなく、ちゃんと練習問題を解いている。私も見回った後は、寝っころがった。
「校長先生に見つかったらどうなるの?」
「うーん、先生クビかな」といい加減に答えると、Ryが
「え、マジ?」と心配してくれる。
「だからこれは秘密だぞ」というと、みんな共通の秘密を持つ興奮と嬉しさを顔に出しながらうなずいていた。
「今日のことを日記に書こう」という子どももいた。
■署名?
5年生の先生から、
「うちのクラスでは、なぜかコモダ先生の人気が高いだよね」
と声をかけられる。
なんと、5年生の子どもたちは来年「コモダ先生」に担任をしてもらうために、署名活動を検討しているとのこと。
11月
■外務省
から視察団が来る。スーツを着た大人たちが教室に入ってくる。
給料出してくれるのも外務省だし、領事も総領事もPTA会長もついてくる。教員は一様に緊張するが、
子どもたちは「全く関係なし」の構えで、のびのびしている。
お母さんたちが見に来る時はあんなに緊張しているのに。お母さんたちに比べれば、このおじさんたちは眼中にないと言った感じか。授業参観の逆だなあ。
■学芸会準備(1)
学芸会の準備に入る。
私が書いた台本を子どもたちに渡して
自分たちで役を決めさせた。
先生の予想とは違う配役になったが、
子どもたちはやる気満々である。
■プロからの褒め言葉
Toのお母さんは、取得するのも難しい
アメリカの教員免許の持ち主で
アメリカ人に教えている現役の先生。
お父さんは医学の研究をしている博士である。
「その方から聞いた話です」と、前置きして
O先生が声を掛けてくれた。
「コモダ先生はデーターを取りながら、
一人ひとりをまとめている」
「と評価が高いです」よと。
そう言われたときは
冷や汗が出た。
■学芸会準備(2)
父兄に、学芸会の道具作りの
ボランティア募集の声掛けをしておいたが、
他のクラスでは、誰も来てくれなかったという例もあったので
誰か来てくれるのだろうかと心配。
ところがなんと16名ものお母さんたちが駆けつけてくれた!大感激!
作業指示書を渡して説明すると、
「大丈夫です。任せてください」
と、頼もしく請け負ってくれた。
これで大道具・小道具作りは全部任せられて
ほかの事に集中できる。
とてもうれしい。
■学芸会準備(3)
学芸会の最後の仕上げは舞台練習。
子どもたちは本当によくやってくれる。私はほとんど手を下さず、舞台下の客席で見ていた。
「自分たちでやってみろ」
彼ら自身の力でやり遂げた、という感じを味わってもらいたい為である。
はたから見ると、先生楽してるなー、手抜きじゃないか、と思われるかもしれないが、子どもたちは放っておかれたとは思っていない。子どもたちは
「分かった。先生は何もしなくていいからね」
「そこに座って見ててね」
と私の思いを良く分かってくれる。
もちろん、見ていてはらはらすることはあるし、こうすればもっといいのにと思うこともある。
でも、彼らが自分たちで声を掛け合い、時折劇を中断して意見を言い合い、目をきらきらさせながら練習している姿を見ると、
「ああ、子どもたちは今成長している」
と実感できるのだ。口を突っ込んで邪魔する権利は私にはない。
大人だから、先生だから何でもかんでも「教えてやろう」ってのは傲慢なんじゃないかと思わされる。
終わった後にステージに一声かけて労をねぎらってやる。
「とても良かった。お前たちはすごいぞ!」
と言うと、
大きな拍手が自然におきた。
みんなの顔がキラキラ輝いている。
先生はただただ、すごく嬉しい。
涙が出そうなくらいうれしい。



これは昼の弁当の時間⇒
本当はカフェテリアで
食べなければならない。



